中村座

八尾付近の娯楽の殿堂は中村座である。活動写真(映画)、芝居、浪花節、政見演説会、素人芝居、舞習い、宴会場など、あらゆる催しがここで行われた。

◎活動写真
ラッパ、太鼓、クラリネット等を鳴らして楽隊が、前後に旗持ちが旗をなびかせながら八尾、久宝寺、安中等、八尾の辻々でその日の映写される演題を宣伝するためにに練り歩くのである。タ方になると中村座の二階から「天然の美」の音楽が来場を督促するようにゆっくりと流れてくる。
活動写真の順番はつぎの通りである。
一、実写(風景)
二、喜劇(例 チャップリン)
三、活劇(例 ハリケンハッチ) 
四、新派(例 己が罪) 
五、旧劇(例 尾上松之助の岩見重太郎)

◎芝居
旅役者が数日間滞在して演劇するのであるが、森 正夫劇団が最も人気があったようである。
演題が毎日変わるので東西屋の「ウシヤン」が太鼓ど鐘で町中流し歩いて、四つ辻て当日の題目を披露するのである。

◎浪花節
京山小圓、富士 月子、日吉川 秋水、広沢 駒蔵、吉田 奈良丸等、当時の有名な浪曲師が出演していた。

◎政見演説会
衆議院選挙の際には、巡査立ち会いの下で、岩崎 幸次郎、國村 音吉、勝田 永吉、田中 万逸、杉山 元次郎等、政界の名士が多数の聴衆を前に熱弁をふるつた。

◎素人芝居
平生は、各種の仕事に従事している芝居好きの連中が、日頃の稽古の上達を町民に安い料金で見せていた。

◎舞い習い
一年に一回、舞踊の師匠に習つた成果を披露する集会で、着飾った少女のあどけない仕草に、破れるような拍手と笹につけた御祝儀が舞台に投げ入れられて、非常な興奮の渦が場内を沸かせた。

◎宴会場
毎年四月三日は招魂祭が、忠魂碑ロ前で在郷軍人、小学校生徒参列の下で挙行されていたが、終了後は必ず中村座で在郷軍人が折箱と酒のもてなしを受けて親交を深める機会をもった。

参考:中村座は八尾市本町ニ丁目十番十二号にあったが、現在は喜多ビルが建っている。